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ナイチンゲール看護研究所
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“病院建築家”としてのナイチンゲール

 「感染症は予防できる」と考えたナイチンゲールが、当時最も心を痛めていたのは、本来病人を病気から回復させるための施設であるべき病院が、その病人の詰め込みや、病院管理のあり方の誤りや、そして何よりも病院の建築構造そのものの欠陥によって、却って病状を悪化させ、さらには二次感染(病院内の感染)を誘発する温床となって、死亡率を上昇させているという現実についてでした。

 そのためにクリミア戦争から帰国後の彼女は、陸海軍の病院だけではなく、一般の公立病院や民間病院のあり方に目を向け、とりわけ病院建築のあり方について考察を深め、数々の提言を行っています。病院建築のあり方に関するナイチンゲールの指摘や提言の大要は、『病院覚え書』という著作にまとめられ、冒頭部分で次のように述べています。

 
 病院がそなえているべき第一の必要条件は、病院は病人に害を与えないことである。(中略)というのは、病院、それも特に人口の密集している都市の病院《の中での》死亡率が、病院《以外の場所で》手当を受けている患者について予想できる同種の病気の死亡率よりも、はるかに高いからである。


 ナイチンゲールは、“病院病”を発生させる原因として、以下の4点を挙げたのでした。
    a:ひとつ屋根のもとに多数の病人が密集していること
    b:ベットひとつ当りの空間の不足
    c:換気の不足
    d:太陽光線の不足
 病院に不健康さをもたらす一般的で、かつ避けることのできる原因を多数とりあげ、次にそれらをふまえて“病院はこう建築されるべきであるという原則”について述べています。


 病院構造の第一原則は、分離させた各パビリオンに病人を分割することである。病院の場合パピリオンとは、建物全体のうちの分離して造られている一棟をいう。 (中略)パビリオン建築を特徴づける決定的なポイントは、規模がどうであれその病院をいくつかの独立した部に分離させ、全体に共通の管理はあるが、その他の点ではいっさいが別々であるということである。

 大部屋主体のシンプルなパビリオン式病院の良さは、ナイチンゲール文献によれば、以下の4点にまとめることができます。

   1. 自然換気が容易に、かつ完全にできる病棟構造であること
   2. 看護面からみて、監督指導が容易にできること
   3. 患者の規律が、守られやすい病棟であること
   4. 建築上および管理上、費用が少なくてすむこと

 そして1871年、ナイチンゲールが指摘した条件を満たした病棟が、ナイチンゲールの指導のもとで、ロンドンにある「聖トマス病院」に建築されました。ナイチンゲール病棟のモデルとして歴史に残るデザインです。その縁で「ナイチンゲール看護師養成学校」は、この病院内に開設されました。

                                   

            

       
                                   

【 図T】のナイチンゲールが指摘した「あるべきパビリオン式病院の構造」

a) 各棟の病室の階数は、2階以上にすべきではない。
さらに高くするばあいは、各パビリオン間の距離を建物の高さの2倍とること。
b) 各階の病室数は、パビリオン全体を端から端まで開け放して、1つの階に病室は1つとすべきである。
c) 1つの病室に収容する最適のベット数は、20〜32床がよい。
d) 特殊な患者を収容するための個室は、一ヶ所にまとめて他の病室とは別に管理すること。大病室に付属させておくと、適切な看護が提供できないからである。
もし1つのパビリオンに付属させるばあいには、2床までとする。
e) 窓は、少なくとも、ベット2つごとに1つの窓がほしい。
それは、「@光」「A換気」 「B患者がベットでものを読めるようにする」ためである。
f) 病室の換気は、ドア、窓、暖炉を主な換気手段として使うべきである。
g) 浴室は、大浴室と小浴室を設け、大浴室は病棟から遠くない位置に廊下から入れるように独立して設け、小浴室は病棟ごとに設置する。
h) 便所は病室の入口の反対側に設ける。間には明るい、換気の良い廊下をはさむ。病院 事務員や看護師のための私用の便所は、患者用とは区別して造らなければならない。
i) シスター(看護師長室)は病棟の片側に配置され、寝室および居間として十分な広さを持つものとする。看護師長は昼夜を問わず待機して指揮をとる。
j) 家事室は各病棟に1つづつ、看護室長室の反対側の通路に付属して設ける。
ここには看護師が食事をとったり、補助婦が洗い物などをしたりすることができる効率の良い無駄のない設備が必要である。
k) リネン室は広くて照明の十分な部屋が必要である。修膳室は別に設ける。
l) 調理場は病棟から離し、壁と天井は明るい色のセメント塗りにする。
m) 洗濯室は病院建築物とは別棟にし、汚れ物は壁の中に設けられたダストシュート(汚れ物を送る管)を通して運ばれるようにし、速やかに洗濯室に運ぶ。

 このように、ナイチンゲールの指摘の1つひとつは、当時としては画期的なものでした。
汚れ物はダストシュートで運ぶという案は、現代の発想ではないかと思えるほどに、そのアイディアには斬新さがあります。

 ナイチンゲールが考案し、推奨した「パビリオン式」病院構造(ナイチンゲール病棟と呼ばれる)は、その後英国のみならず世界各国で採用され、ナイチンゲールの「病院建築家」としての名は、世界のその道の専門家たちに広く知られるところとなりました。

 ナイチンゲールが、病人の看護ということ、病人の療養ということ、病院治療ということこれらの本質にまで踏み込んで考案し、推奨した病院建築構造には、その看護理念とともにそこに展開されるべき病院看護の基本が組み込まれています。ナイチンゲールの病院建築思想の底には、「看護の原理」が横たわっているのです。

 パビリオン式の病院構造を推奨したナイチンゲールの病院に対する考え方は、その後英国のみならず様々な国で取り入れられ、ナイチンゲールの「病院建築家」としての顔は、その道の専門家たちに広く知られるところとなりました。ナイチンゲールの『病院覚え書』は、今も病院建築の専門家の間では、病院建築の原点を示す古典として高く評価されています。


              
     

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